ピットレポートの難しさ

Screen Shot 2012-12-03 at 3.00.23 PM

自分なりにはまったく満足いかないパフォーマンスでレース番組はどんどん進む。何度かピットレポートのチャンスはあったものの殆ど目の前のことを伝えているだけ。まったく付け足す情報もなければそれをゲットする術もないのでどうすることもできない。

12時間のレース中には休憩時間もある。TVコンパウンドでマジに打ち拉がれていたらテクニカル・ディレクターのマイク・クサマが話かけてきてくれた。

「タロウは日本人かい?」と、聞いてきた。聞くと彼は日系3世のアメリカ人。そこでちょっと日本の話が弾んだ。アジア人が殆どいないアメリカン・ルマンの業界で日本人を見るのはうれしいという。それもオン・カメラのタレントとして。あまりそのように考えたことはなかったが、確かにアジア人のテレビタレントは限りなく少ない。自分のことを今までタレントとして考えたこともなかったが、テレビに出る以上はそのように認識した方が良いとも思った。彼は子供のころはテレビにアジア人が出るなんてことは殆どなかった、と言い僕がこの仕事に挑戦していることをとても嬉しく思うと言ってくれた。がんばらんといけないと思ってまたピットレーンに出ていった。

出ていくと、ジェニファーが「なんかないの?」と聞いてくる。何度聞かれて、何度「何もない。。」と言ったことか。

アクシデントでリタイヤしたチームのインタビューをこぎつけてなんとかその場はセーフ。しかし12時間の長いレース。沈黙は厳禁なのである。すぐにまた、「なんかないの?」とくる。

もうイサギよく「がんばったけどこれは無理です」と言ってやめようか?現実的にどう考えても無理だった。いくらがんばっても、今できないものはすぐできない。相手はプロ、知識も技術もまったくかなわない。

でもそれって逃げているってことか?「太郎おまえここで逃げるのか、おい?」と自問。でも実際できないものはできない。迷惑にならないようにやめようか?と真剣に頭の中をよぎった。。。ここまでダメダメに何もできなかったことが思いだせないくらいにダメだった。

あ、そうだ。たしか柔道で白帯のころ黒帯の先生に投げられまくった時と同じだ。。。「そんなんで試合で出るなよじゃぁ!」とまた自答。

このジレンマ。困ったもんだ。

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セブリング12時間レース始まり

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レースが始まるまでにはなんとかやるべきことは理解できたがそれを実行するのはまったく別問題。ケーブルTVで北米中に放送されるESPN2の番組と生で10時間放送されるESPN3の両番組を同じ制作チームが番組を作る。ボクはESPN3担当。ピットレーンにはESPN2の他3人のレポーターもいる。

決勝レースは3月17日(土)午前10:30にスタートした。さぁ、12時間耐久勝負の始まりだ。

最初の仕事はPrototype Challenge (PC) Classのポールチームのインタビュー。レース開始と同時に各クラスのポールポジョンを上から紹介しインタビューする。ここで各ピットレポーターも番組内で紹介される。昨年までジャガーでGTクラスに参戦していて初めて2012からPCクラスでエントリーしているRSRというチームをインタビューすることになった。ドライバーは3人いて、一人はクルマに既に乗っているのでスタンバイしている二人のウチの一人であるトミー・ドリースィー(Tomy Drissi)をインタビューすることにした。

いきなりぶっつけ本番の生放送で行くという。トミーにはスタートと同時にインタビューするからピットテントに来てくれと事前に頼んでおいた。

インタビュー開始5分前。トミー現れず。もう一人のドライバー、ブルーノ・ジュンケイラ(ブラジル)のレーススタートに立ち会っているとチームマネージャーは言う。番組はどんどん進む。プロデューサーは「なんとしてでも探せ」と右耳に言う。カメラクルーは既にピットテントでスタンバイ。

インタビュー開始まで3分。トミーまだいない。「トミーいないんだけど。。」と言っても「探せ」の一点張り。このままボクに振られて肝心のドライバーがいない。もう一人のドライバーも一緒にいない。

インタビュー開始一分前。トミー、やっと余裕ふちかましながら歩いてくる。トミーをつかみ隣にすかさず立つ。その瞬間アナウンサーのジョンが「さぁ、次はPCクラスのポールポジョンです。ピットレーンにいるタロウ・コキに行ってみましょう!」

さぁ、これがキューだ、トミーにマイクを向け「ジョンとジェレミーありがとう、チーム結成は本当にぎりぎりの2週間前。それでもポールポジション。。。」と質問。

同時にレースがスタートしたので爆音が後ろで流れて、自分の声、ヘッドホーンから流れる音何も聞こえない。トミーもボクが何を言っているのか聞こえない。クルマが過ぎ去った後聞こえたプロデューサーの声。

「OPEN YOUR MIC(マイクをつけろ)!」。。。

このドタバタの中で肝心の自分のマイクをオンにすることを忘れてしまった!口パク状態でスタートしてしまった。

すかさずマイクをつけもう一度質問をしてトミーにマイクを向けた。

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後から番組を見るとそれほどのミスではないように見えるが(と思う)その時はもう穴があれば入りたいほど。自分においおい、いきなり本番でやるかと?呆れと後悔が頭の中をぐるぐると巡る。やっちまったなと反省する反面、まだレースは始まったばかり。これからなんとかして挽回しようと気持ちを持ち直してピットレーンに向かった。

クレデンシャルよし

                                      セブリングのような大きなレースには火曜日に現地入りし、水曜日からサーキットで準備を始める。水曜日朝一の制作ミーティングに間に合うように宿を出た。しかしサーキットについたらまずクレデンシャル・パスをメディアの受付で引きとってから施設内に入る。慣れているイベントやサーキットなら勝手がわかっているのでスムーズに進むのだが初めてのサーキットに初めてのアメリカン・ル・マン・シリーズとあっておまけに広大なセブリングの敷地内のいったいどこにメディアセンターがあるのか分からない。メディアセンターに着くと名前が登録されていない。。。あらかじめ顔写真などオンライン登録で済ませてあったのに又その場で写真とったりその後迷ってなんやかんやシャトルに乗ったり降りたりしているウチにミーティングに案の定遅刻。一時間早く着く予定だったのに。。。大丈夫か、おい?と独り言いいつつ。

「おおー、来たか!」とプロデューサーに迎えられ、ミーティングに途中から参加し、15人ほど一度に紹介される。名前と顔を覚えるのが案外苦手な方なので結局誰が何なのかほとんどわからず。

ALMSのユニホームやジャケットを渡されたのだが、袋に書いてある自分の名前のスペルは完全に間違っていた。。。Tarrellって何?NFLワイドレシーバーみたいな名前だなと一人でウケて、おもわずTwitterでツイート発信。見渡せばまったく日本人というかほとんどアジア人もいないことに気づき、ま、これなら仕方ないかと変に納得した。

ミーティングで確認できたのはボクはあくまでもESPN3というESPNのオンライン配信版のレポーターということ。オンライン版と言ってもかなりしっかりしていて、ちゃんと専属のアナウンサーも二人いる。その内の一人はラジオ・ルマンで有名な英国人、ジョン・ハインドホフ。わざわざイベント毎にイギリスからやってくる。アウディのTruth in 24というドキュメンタリーを見たことある人なら知っているかもしれない。何度も彼は登場する。とにかくモータースポーツのことなら何でも知っていて、話をさせたら一流のレースアナウンサー。それがいきなりトレーラーに入ったら目の前にいてびっくりした。

もう一人はジェレミー・ショーというこれまた英国人。彼はアメリカ在住のレースジャーナリスト。アメリカの若手ロードレーサーを育てるTeam USA Scholarshipというなんともすばらしい奨学金制度を設立し運営したりとレース業界でしっかりと地位とリスペクとを築いている。

この二人をレース中ヘッドフォンのプログラムチャンネルで聞いていると自分の発音もつられてイギリス風になりそうになるので注意が必要なのだ。漫才ばっかり見ていると思わず関西弁で「なんやねん?!」とか言いそうになるのと同じことだと思う。冗談はさておき本当にこの二人、ボクを暖かく迎えてくれたのだ。

「分からないことがあったら何でも聞いてくれ」、

「なんか知りたいことないのか?」などと話しかけてきてくれた。

しかし正直あの時は何を聞けばよいのかさえ分からないほど分かっていなかった。読者の皆さんそのような経験があるでしょうか?

ピットレポーターとは。。。

ピットレポーターとはレース中継時にピットエリアからレポートする人のことを指す。いわゆる現場から生の声でレースを視聴者に伝える重要な役割であり。日本人でもっとも有名なのはなんと言ってもフジテレビのF1中継で有名な今宮純さん。学生時代F1全盛期に今宮さんのエキサイティングな現場レポートを聞いて喜んでいたのを思い出す。まさか自分が同じことをするようになるとはまったく夢にも思わなかった。

レースの種類によって多少異なるがアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)のピットはアメリカのサーキットで行われるので腰ぐらいまでの高さのピットウォールがあり、クルーはその後ろで通常スタンバイしている。ピットストップ時にはそのピットウォールを飛び越え、タイヤ交換や燃料などの整備を行う。もちろんドライバー交代も同様。日本やヨーロッパのサーキットは壁がない場合がほとんどで、ガレージの目の前でピットストップを行うことが多い。

ピットレポーターは通常この壁の外、つまりレースカーのすぐ側から現場の状況をレポートする。シーズン途中から機材がアップグレードされたがセブリングでは頭にアンテナのついたヘッドフォンをつけ、腰の周りにはバッテリーと通信機をつけて歩き回る。

耐久レースでは必ず燃料補充が必要なのでピットエリア内に入るにはスタッフ、メディア、クルー、マネージャー全員必ずレーシングスーツの着用が義務づけられている。これは格好の為ではなく、防火素材でできているので安全の為に着る。ピットロード上で仕事をするクルー、ドライバーとマーシャルはヘルメットの着用まで義務づけられている。アナウンサー/レポーターはこの大きいヘッドフォンがあるため一応ノーヘルが許されているが、ヨーロッパではそろそろノーヘルが禁止になるのではないかと言われている。安全の為にはもちろん良いと思うが、この格好に顔が出たヘルメットをしてオンカメラはけっこうキツイものがあると思うのはボクだけではないよう。。。特に小柄な女性ピットレポータにとってはマッチ棒みたいに見えてしまいせっかくの美貌も台無しになること必至。ま、いわゆるマヌケに見えるということで反対意見が多いのである。

ALMSのレースは最長が12時間で最短が2時間。いずれもブース内のアナウンサーと解説者が喋り通しではつまらなくなってしまい、長丁場である程現場からピットストップのレポート、アクシデントの最新情報、ドライバーインタビューなどで番組に貢献する。やはり生の声をピットレーンから伝えることで番組の面白さが格段にアップする。

ヘッドフォンのオーディオは2チャンネル別々に分かれている。右耳にIFB(Interruptible foldback)と言われるディレクターやプロデューサーがアナウンサーに話す時に使うチャンネルと左耳は番組音声のProgramチャンネル。IFBはプロデューサーなどが指示を出すのに使う。ピットレポータの場合はキューしたり、「あと10秒でまとめろ」とか具体的な指示を出される。また、オンエアでない時にもこのチャンネルをつかってプロデューサーと会話もできる。例えば「◎◎号のタイヤがパンクしているけど今からレポートできるよ」などと現場からレポートをピッチ(提案)する時に使うチャンネル。これが爆音極まるピットレーンから冷静に行う必要がある。ピットエリア内は混沌としているのでピットレポーターはすべて単独行動。唯一進行中の生番組との繋がりはヘッドフォンの右耳からのプロデューサーの声と左耳から流れる番組音声であり、レースの展開、番組の空気を自ら把握しあとは一人でネタ探しに走り回り、インタビューも一人でアレンジし、ピットレポートをピッチし、キューに従いマイクでそこからレポートする。カメラが必要とした場合には二人いるピットカメラをこっちに送ってくれる。

上記のことをほとんど知らないままセブリングの初仕事に挑んだのでした。今思えば恐ろしい。。。

ファルケンタイヤと始めのきっかけ

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このESPN/ALMSの仕事はあるツテを元にボクがGTChannelとして何かアメリカン・ル・マンと仕事がしたいとアプローチしたことから始まった。そこにはファルケンタイヤとの関係が意味を持ってくる。

米国ドリフト界でファルケンタイヤはかなり大きな存在で我々はフォームュラドリフトで活躍するファルケンの日本人ドライバー吉原大二郎選手に密着したBehind the Smokeというウェブシリーズを2011年から配信し、良い関係を築いてきた。2011年に大二郎選手がシリーズ優勝し、その一部始終をすべてビデオにおさめて毎週月曜に配信する週刊ビデオシリーズとして5ヶ月間に累計100万ビューを突破するヒットとなった。その番組を制作するにあたり現場問わずフルアクセルでGTChannelは撮影を許され大変お世話になっている会社である。

ファルケンは2年前からこのALMSのGTクラスにポルシェで参戦していて、ALMSからは新タイヤメーカーの参入ということで歓迎されていた。ファルケン本体はタイヤ開発の場として、現地法人はマーケティングの一環としてこのALMSを選んだ。ドリフトではストリートタイアを使用しているが、GTクラスのポルシェは一般道路では走れないレーシングスリックを使用。レース用のスリックタイアを販売していないファルケンにとってはまさに開発の為のプラットフォームだった。レースに参戦することによりタイヤ開発に必要なデータを思う存分収集することができる。特に長い時間、長距離を走る耐久レースは自動車メーカーやタイヤ会社にとって大事なデータ収集の場なのである。勿論勝つことは大前提だが同じくらいに開発の場しての意味合いを持つ。レースに参戦することによりあらゆるデータを技術チームは収集できる。どのタイヤ構成とどのコンパウンドがどの環境でどのように走るとどのようなパフォーマンスをするのか。温度から内圧、すり減り具合と計測できるものはすべて網羅する。メーカーが参戦するということはそれだけ本気ということ。

そのファルケンからのお墨付きがボクにあったことはALMSにとってまずは好印象であったことは間違いない。もう一つ大きなポイントはGTChannelは狙い目のデモグラフィックである18−35才の客層をがっちり押さえていることだった。8万人以上の購読者をYoutubeでもち、一ヶ月に2百万以上ビューがある自動車チャンネルはパートナーとして最適。しかし彼らはタダ単にコンテンツを提供したり共同でコンテンツをプロデュースするよりもボクをチームメンバーとして迎え入れることを選んだ。それは本当にALMSの一員のピットレポーターとして内部に入れることにより一層強い関係を築き全体的にGTChannelとの相乗効果を目的とした。

大きな絵としては理想的な提携だった。同時に個人的にもこれは希に到来する大チャンスだと見て、少々不安はあったが快く引き受けた。オンカメラはGTChannelのビデオで何度か経験はあった。「自分なりの視点で新鮮なレポートをしてほしい」という言葉に多少安心して、全力でぶつかってみることにした。

提携の内容を報告するとファルケンの担当者も「え?ピットレポータなの?」と話が若干違う方向に進んだことに多少びっくりするとともにその新しい機会に喜んでくれた。

晴天のセブリングに到着!

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さぁ!3月14日(水)にSebring International Racewayに到着。今回のセブリング12時間レースはFIAが始めたWorld Endurance Championships (WEC)との共催。つまりALMSの34台とWEC30台の合計64台のクルマが同時に走ることになった。通常のALMSは30〜35台前後。これがWECの共催となりプラス30台の大規模レースとなった。

ル・マン24時間レースを開催するACO(Automobile Club de l’Ouest)とF1を持つ国際自動車連盟であり世界的レース権威のFIA(International Automobile Federation)が2011年に提携し世界規模の耐久レースシリーズであるWECを立ち上げた。その初ラウンドがこの2012年のセブリング12時間レースとなった。WECはセブリングの後 ベルギーのスパ、フランスのルマン24時間、日本の富士スピードウェイ、ブラジルのインターラゴス、英国のシルバーストーンと世界有数のサーキットを巡る。その他今後メジャーになり得るバーレーンと上海も加わった。

参加チームはルマン常勝のアウディやハイブリッド車でシーズン途中から参加したトヨタなどのワークスチームを始めルマンで活躍するチームがぞろりとそろっている。

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ALMSのセブリング12時間レースとはNFLで言えばスーパーボウル、野球ならワールドシリーズからシーズンを開幕するようなもの。

そのセブリング12時間レースがレポーター初仕事となったボクはまだこれから待つべく地獄を予想することもできなかった。。。

まずはキューバ料理で腹ごしらえ

Image圧倒的な(?)指示により今日もブログ投稿します。しかし、短めに。

フロリダと言えばマイアミ。マイアミと言えばキューバ料理。ということでマイアミからクルマで移動してセブリングまで行くことにした我々はレンタカーで北へ向かったが、まずは腹ごしらえということでキューバ料理の店をYelpで探した。そこで見つけたのがこのフリーウェイ横の食堂。会話はすべてスペイン語で超本場のキューバ料理を食わせるテイクアウトのみの店。鶏肉、プランテーンとご飯の定食。

いやー旨かった。。。

イベントは土曜日だが、セブリングには火曜日に入り、水曜日から現地で準備に入る。セブリングは大イベントなので町のホテルは超満員。ALMSのスタッフが用意してくれた宿はサーキットから10分ぐらいの貸屋。普通の家庭が普段は住んでいるただの家。そこをイベントの時だけ貸し出すのだ。おそらく良い金で貸し出せるんでしょう。旅行代ぐらいにはなるのかな?それともキャンピングカーでセブリングのインフィールドで一週間キャンプするのかな?いろいろと想像しながらとにかく人の家に五日間住むことになった。

Image裏庭の風景。。。